SDGs 時代のプラスチックとゴミと環境政策

 

海洋プラスチックごみの問題について

ある調査によると、海洋にはすでに1億5000万tものプラスチックごみがあり、現在も世界全体で年間およそ800万t規模のプラスチックごみが流れこんでいるとの事です。今後もこのペースで流入が続くと、2050年には海にいる魚と同等にまで増えると予想されています。プラスチックは軽い上に丈夫で加工し易く、便利で安価な素材ではありますが、レジ袋が分解されるまでに1000年以上もの年月を要するとの研究結果もあり、一度海に流れ込んでしまうと、環境に長い期間悪い影響を与えてしまいます。実際に海洋ごみにからまったり、摂取したりすることで絶滅危惧種を含む700種もの生き物が、傷ついたり死んだりしており、誤ってごみを摂取してしまったウミガメが全体の約50%、海鳥で約90%と推測されています。

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© Troy Mayne / WWF

このように大量の海洋ごみが発生してしまう原因の一つとして、世界のプラスチックの年間生産量が過去50年で20倍に拡大していることが挙げられます。特にペットボトルやレジ袋、食品トレーなどの一度の利用で捨てられてしまう「使い捨て」に使用されることが多いパッケージ用のプラスチックの生産が、ごみの量を増やしてしまうのに大きく影響しています。その上、リサイクルや焼却処理、埋立処理が追い付かず、適切に処理されないプラスチックや、意図的に捨てられたペットボトルなどが河川や海岸から海へ流入し海洋ごみとなっています。

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産業セクターごとの世界のプラスチック生産量(2015年)

世界のプラスチックごみの排出量(2015年)
[出典:UNEP (2018). SINGLE-USE PLASTICS]

このような大きな問題の解決に向けた一歩として我々に出来ることは、「使い捨てプラスチック」の利用を減らしていくことです。国内で年間に使用されるレジ袋は約400億枚と推計され、一人当たり1日で
約1枚消費している計算になります。そこで多少不便ではありますが、マイバッグやマイボトルを持ち歩くことで、その利用自体を減らし海洋プラスチックごみになることを防ぎ、地球環境に負荷の掛かるこの問題に取り組む必要があると思います。

生分解プラスチックをめぐる中国の動向について

廃プラスチックによる海洋や土壌での汚染問題が深刻化し、その解決策が求められているなか日本では、2019年プラスチック資源循環戦略が策定され、2030年までにバイオマスプラスチックを200万t導入する目標を掲げ課題の一つとしております。
スペインのアルメリア県での農業廃プラのリサイクル状況をご紹介しましたが、同県では生分解性マルチの試験・普及も本格化しております。
そこで中国についてですが、プラスチック汚染対策の強化に向け、包装用フィルム、レジ袋、使い捨て
プラ食器、農業用フィルムの4分野で、生分解性プラスチックが広く利用されると期待されていますが、
現状は世界の生分解性プラの浸透率(2019年)が約3%に対して、中国は約0.63%と僅かであります。
国内の生分解性プラ産業は、現状開発の初期段階にあり、市場規模はまだ小さく技術やコストの最適化を図ることで、今後は上記4分野で約1,020万tの潜在的需要があると見込まれています。
2019年中国のプラスチック製品生産量は8,184万tに対して、下図の生分解性プラの消費量は52万t、ここ数年は右肩あがりで消費量が多くなっております。

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生分解性プラの浸透率を引き上げるうえで、一番期待されているのは農業用マルチです。中国農業部のデータでは2017年の地膜使用量は143.66万t、2025年には地膜のうち生分解性の浸透率が20%を達成する見込みで、市場規模は約30万tを予想しております。

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その取組みの一つ、重慶市の14か所ある試験区のうち1試験区では、除草目的で約150ムー(10ha)の果樹園に生分解性地膜を使用、コストは1ムーあたり120元で普通地膜より約30元高いですが、回収コストを考えると高くないと見込んでいるとのことです。ただ普及性が気になるところです。もう一つ、甘州の農業技術普及センターは、3年間生分解性地膜と高効率環境フィルムの実証試験を21か所、計5,000ムー(333ha)でトウモロコシ、ジャガイモ、トマト、タマネギなどを対象に行い、ジャガイモなどの根菜作物は普通フィルムと比較し、約10~15%収穫量が増加しました。一方生分解性地膜は、使用後6か月間土壌に埋められ、二酸化炭素と水に分解され土壌汚染することなく、土壌の品質を向上させ、合わせて地膜回収の手間を省き農民の負担を軽減しました。またこの地区では2021年、80,000ムー(5,336ha)に生分解性地膜を普及させるために、プロジェクト資金を確保し、地域全体の農業生産と環境保護に役立てようとしています。このように各地区での取組みをみますと、中国では生分解性プラスチックの本格的な普及に向け動き出していると思います。

 
 

プラスチックごみ削減に向けたドイツの政策について

日本でレジ袋の有料化が始まって1年が経ちました。

開始から半年後の環境省の調査では、レジ袋をもらわない人が倍に増えるなど、ある程度の効果はみられるようですが、生活様式の変化にはまだ至っていないように思えます。その一方でプラスチックごみ削減に向けて環境政策を進める国ドイツ。

現在、ドイツでは小売店にレジ袋の有料化を義務づけています。2016年から進められてきました有料化により、ドイツ国内のは年間消費量48億枚(2015年)から15億枚(2019年)へと減少。さらに減らすために2020年包装法の改正案が可決され、2022年1月よりレジ袋の取り扱い自体が禁止となりました。

その上、日本では有料化の対象外となっている、バイオプラスチック製や生分解性のレジ袋も、環境に対して負荷が高いことから禁止対象とされています。すでに多くの小売店では有料紙袋や厚手のバッグに切り替えており、環境省も繰り返し使えるエコバックやカゴの利用を推奨しています。

レジ袋の禁止以外にも生活する上で様々な場面で、プラスチックごみ削減に向けた動きが加速しています。

すべての使い捨てペットボトル容器にデポジットが課金され回収が促進されることや(2022年施行)、飲食店では繰り返し使うことが出来るリターナブル容器やカップの提供が義務付けられること(2023年施行)が決定しております。今年の7月からはスプーン、フォーク、皿、ストロー、マドラーなどの使い捨てプラスチック製品が禁止となっておりますし、発泡スチロール製のテイクアウト容器やカップも禁止対象になっている為、多くの飲食店では紙製やリサイクル可能な容器に切り替わっています。

 

ドイツにおけるプラスチックのマテリアルフローついて

マテリアルフロー全体像(下図)2019年ドイツのプラスチック生産量は、バージン原料10.3百万t、リサイクル材料2.0百万tでした。この生産量に輸出入の差(+1.9百万t)が加わり、加工段階へ14.2百万tが投入されます。次にゴミと回収の段階ですが、ゴミ6.3百万tのうち、そのまま廃棄されるのは0.1百万t以下にすぎず、6.2百万tはリサイクルと熱回収に利用されます。

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前述のリカバリ量6.2百万t(主要量5.35百万t)の内、2.93百万tがメカニカル(日本ではマテリアル)リサイクルまたはフィードストック(日本ではケミカル)リサイクルされています。このうち0.58百万tが輸出されリサイクル工程で0.3百万tが熱回収、フィードストックリサイクルは0.01百万tです。このため国内でメカニカルリサイクルされる量は2.04百万t、残り3.31百万tの内2/3は都市ごみ焼却による熱回収、1/3は固形燃料を介して発電所などで熱回収されています。

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プラスチックごみの処理方法は、ドイツではメカニカルリサイクルが47%と日本の2倍以上の割合になっており、日本ドイツ共に熱回収の割合が高くなっています。日本とドイツの最大の違いは、日本は未利用(単純焼却や埋立処理)が1.24百万tと相当な量があることです。ドイツでは埋立処理が原則禁止な上、容器包装法によるリカバリ目標が90%であることと、メカニカルリサイクル目標58.5%(2019年)の影響が大きいと考えられます。今後は、先述した日本のメカニカルリサイクルの割合をドイツ並みに引き上げる目標を掲げ、未利用のゴミの量を減じていく必要があると思います。